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第40回 全国商業教育研究集会(報告)
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「事実と真実と道理に基づいて」
全国商業教育研究協議会代表理事
嘉悦大学元学長・名誉教授
古 賀 義 弘
今夏、全国商業教育研究協議会に初めて参画するに当たり、かねてから尊敬していた先輩
の研究者の言葉が頭をよぎった。その先生は日ごろから、「物事をなす場合、事実と真実と
道理に基づかなければならない。」と口にされ、ご自身もこの言葉通り誠実に生き抜いて行
かれた。そしてこの言葉は、今私の言葉として新たに生き続けている。
教え育むことは「事実」から出発することが第一であると考える。事実を歪曲、虚構の教
え或いは事実から目を逸らす教育は,教育の名に値しないどころか罪悪でさえある。事実か
ら閉ざされた人や社会がどのようになって行くかは、歴史を紐解くまでもなく自明である。
事実からの遮断は「真実」への道を閉ざし、その人と社会の未来への道筋を誤らせることに
なる。教育に携わる者の基本的な姿勢は、事実はあくまで事実として提示することであり、
その上に立った教育を追及しなければならないと考える。
学生・生徒はその中から「真実は何か」を導き出していく。真実に向かい合った学生・生徒
はその若さゆえにやや危うさも抱えながらも、その感性とエネルギーによって、それが紆余
曲折しても、また非常に長い時間を経ても、「道理」に基づいた方向に向かって進む
ことが出来ると確信している。その意味で私たちの教育は長い道のりとの「勝負」である。
翻って、学生・生徒はもとより教師を取り巻く現状を考えると、そこには悪しき状況があ
まりにも多いことに気付く。教育現場に立つと、暗喩たる気分になり、時として挫折しそう
にもなってしまう。しかしその支えになるのが学生・生徒の顔や声であり、また教育の仲間
の存在である。私たちはしばしば学生・生徒から教えられたり励まされたりする。また、仲
間がいることで、それも全国的な規模で基本的な姿勢が同じ仲間が存在することで多くのエ
ネルギーをもらうことが出来る。逆に仲間に与えることも出来る。その仲間の輪が大きく、
固く結ばれることで、これに勝る「財産」はないと思う。
「事実」から出発して「真実」に向きあう教育を目指す仲間、その大きな「財産」がこの協
議会ではないだろうか。お互いに信頼し、刺激しあい、励ましあいながら歩いて行こうと考
えている。
< 記念講演 >
「格差社会と教育」 〜教育として「格差」を考えるいくつかの視点〜
一橋大学大学院教授 久冨 善之 先生
< 特別講演 >
「教育の現状と商業教育の課題」
一橋大学名誉教授 浜林 正夫 先生
< 集会レポート概要 >
1.四日市学「商店街活性化から脱車社会へ」
三重・四日市商業高校 山本 政己
課題研究「四日市学」は、広重の描いた浮世絵「四日市宿」の学習からはじまり、
江戸時代からどのような歴史を経て現在に至ったかの調べ学習である。今回のレポー
トでは、商店街火災に関わって、被災地再開発の復興ビジョンを提案。市民的な議
論を呼びかけ、これまでにない取り組みとなった。
2.ラスト授業inトメ高校 宮城・登米高校 高橋 利昭
2008年3月14日、退職するにあたり、登米高校で2年5組38名と先生方
20名を前にして、教職最後の授業をすることになりました。「借方・貸方の話」
と「商品の話」を2部建てで行った授業の報告です。
3.全校商業教育研究協議会の発足当時の社会情勢 京都・龍谷大 花坂 久
東京・大阪・京都とも革新知事で、急激な生徒増の時期であり、地方財政も豊か
で組合活動も盛んな時代でした。昭和42年8月理産審の「高等学校における職業
教育の多様化について」商業に関する新学科として事務科、営業科、貿易科、秘書
科、経理科の5学科が掲げられ、商業科目の種類が20から36科目になり、多様
化路線は度重なる学習指導要領の改訂でも基本的につらぬかれています。昭和43
年ごろ、全国各地でサークル活動か起こり、全国商業教育研究協議会が結成されま
した。@商業教育は、社会教育のなかにどう位置づけるのか。A商業教育が依拠す
べき科学とは何なのか。といったことが研究テーマでありました。高枝は完成教育
であり、基礎教育として「読み」「書き」「計算」「社会を見通す力」が要求され
ます。現在の政治・経済から、今後の日本経済のあり方を考える力を付けることが
大切であると思います。
4.商業教育とキャリア 東京・第一商業高校 真嶋 康雄
(1)東京の商業教育として、2008年度の都立商業高校の入試倍率は、0.88
から1.38倍であった。都内の商業高校と総合高校の学校設定科目についてみると、
資格取得を中心にしたものが多く、全国をみると、基礎的知識と科目を履修しなが
ら様々な専門性の育成をめざすものが多いが、商業教育の細分化をもたらすのはお
おいに問題がある。商業高校のキャリア教育の位置づけで多いのは「ビジネス教育」
「スペシャリスト」の文言。文科省の「目指せ!スペシャリスト」事業による「スー
パー専門校」指定事業には問題がある。
(2)日本で「キャリア教育」の文言が登場したのは1999(平成11)年の中教審
答申からである。キャリア教育の実施、推進、キャリア教育の定義は「意欲・態度
を育てる」「勤労観・職業観を育てる」となっていた。背景として進路状況の悪化、
フリーター・ニートの増加、非正規雇用の増加などがあげられる。
(3)アメリカの「キャリア・エデュケーション」との関連では、重要課題としての
位置づけ、普通教育と職業教育との併行、カリキュラムの改善、全ての学校での展
開などの点で大きな違いがある。
(4)職業教育の問題点として、憲法、教育基本法、労働三法などに基づいた職業教
育、労働基本権、正しい職業観、勤労観の確立、インターンシップと職場体験に偏
る観念的な職業教育の改善、普通課程での職業教育の展開、再雇用と再就職のため
の社会労働政策として、職業教育のシステムの確立、少子・高齢化社会に対応して
高い労働生産性の確保のためにも職業教育の重要な意義がある。
5.生徒小作文から見える高校生の憲法意識
〜裁判員制、日本国憲法前文、第9条、18歳参政権〜
愛知・春日井商業高校 塚田 忠雄
裁判員制度の導入、憲法改正の国民投票法の成立にあたり、私たち教員に何が求め
られているかを改めて考えさせられる報告。サブテーマに挙げているそれぞれのテ
ーマで生徒が書いた小作文を読むと、「他人事」「無責任」ともとれるものも少な
からず見られる。しかし、たとえば裁判員制度ひとつ取ってみても、我々大人でさ
えとまどう制度であることを考えると、「健全」な意見ではないか。諸外国の多く
は18歳で選挙権を獲得する。一方、わが国では政治教育が青年期教育の中で欠落
しているという問題がある。子供たちをもっとオトナに育てる仕組みが高校教育に
求められていると結んでいる。
6.住吉商業高校における総合選択制 大阪・住吉商業高校 井上 賢二
大阪市立住吉商業高校は2003年より商業科総合選択制を導入した。 2008年
度の学校要覧ではその特色として、@1年次は全科目共通履修 A2年次に「簿記
系」「ビジネス系」「マルチメディア系」「起業者育成系」「商業英語系」の5つ
の系より1つを選択 B多様なニーズに応えるため、魅力ある「学校設定科目」を
設置 C就職だけでなく進学にも対応したカリキュラム D多種類の資格取得が可
能をあげている。
ところが、2008年7月校長より、教育課程の変更と「総合選択制」の廃止(20
10年より)、商業高校の原型に立ち戻り、本来の実業高校(職業高校)を目指そうと
いう提案が突然行われた。教員側からは廃止の意見が以前からあったので廃止反対
の意見はなかった。 7年間で終止符を打つ総合選択制は、一般教養科目等が選択
で生徒の基礎学力の形成に問題がある、選択講座の多さで生徒が混乱し、内容の似
通った科目が多く、教育効果があがっていないということであった。今、住吉商業
では委員会を立ち上げて、新しい教育課程作りの準備を始めているが、これは20
12年(開校予定)に大阪市の伝統校である三校(天王寺商業、市岡商業、東商業)を
一枚に統廃合し、天王寺商業の跡地に新商業高校を作ろうとしている問題と軌を一
にしている。この統廃合が周辺商業(淀商業、鶴見商業、住吉商業)の極端な多様化
からの脱皮と新商業高校との差別化を図る地固めを開始させたようである。
7.現行学習指導要領・教科書の問題点と現代社会の理解を目指す授業実践
東京・第一商業高校 真嶋 康雄
(1)各商業科目の学習指導要領での位置づけは各教科書の章別編成に表されている
が、一覧表でみると重複している内容が多い。例えば、「サービス経済化」「経済の
サービス化」はビジネス基礎、商品と流通、国際ビジネスにほぼ同じ記述がある。こ
れは、現行の学習指導要領と教科書が体系性に欠け、商業と経済の歴史、理論、現状
、構造、メカニズムの基本的内容が著しく不足していることを露呈している。また、
サービス経済化の原因を「所得水準の上昇」「労働時間の短縮」「余暇時間の増大」
とするなど、事実に反する内容となっていることは問題である。
(2)現在、商業経済系科目の教科書に欠けているものは、国民生活、経済社会、国
際経済、企業活動など現実の経済社会をリアルにダイナミックにとらえることであり
、理論も歴史も現状の理解を土台としていないことである。新しい教科書の在り方を
以下の様に考える。
i)商業経済I(商業の歴史、現代の商業、各産業、企業、企業活動と経営)
A)商業経済U(経済学の始まりと歩み、戦後経済史、経済政策、資本主義)
B)企業と経営(企業とは、日本・世界の企業、企業経営、株式会社、企業と
マーケティング活動)
C)国際経済 (経済の現状、世界経済の歩み、世界と日本、国際経済の問題点)
(3)授業に使えるインターネットの統計資料と実際に授業で使用したプリント42
枚を紹介(日本の富裕層と貧困・格差、未婚・非婚・少子高齢化問題、教育問題と子
どもの貧 困、貿易構造と食料自給、サブプライムローン問題、財政と金融、消費税、
企業買収、地球温暖化など)
8. マーケティングの授業についての問題意識
北海道・美唄高校 佐藤琢磨
昨年近くにある専修大学北海道短期大学でマーケティングを科目履修したさい、担当
の金先生(準教授)から「マーケティングは暗記するのではなく、理解することが大
切です。」という言葉が印象に残った。教科書のマーケティングの内容にも疑問を感
じていたときだけに、理論を学び、理論を応用して実際の市場の分析ができるように
なる金先生のマーケティング授業を参考にして取り組んだ、私の授業をレポートにし
たものです。生徒のニーズである検定にも対応しながらも、用語の暗記に終わらず、
理論を実際の市場分析の道具として使えるマーケティングの授業を、どう作っていけ
ばいいのかを毎日考えています。
9.働くことを学ぼう 北海道・函館商業高校 倉部 静雄
「経済活動と法」の授業で、視聴覚教材を使った取り組みについての報告。中でも
「社会生活に関する法」(消費者と法・労働と法・家族と法)を重要視して指導した。
授業では、各種資料を活用し、就職試験の受験から入社後の働き方まで一連の「労働」
に関することを伝えることを目的として限られた時間の中で授業を展開した。その中
で、ガイアの夜明け「雇用格差〜漂流する"就職氷河期世代"〜」を視聴し、昨今問題
になっている「ワーキングプア」や「ネットカフエ難民」、「就職氷河期世代」など
について伝えた。
生徒の感想は、大別して、@「我慢が足りない」「考え方が甘い」などという厳し
い意見。A「就職氷河期の人たちが可愛そう」「格差社会の厳しさがわかった」とい
う認識を知っての同情。B「何でこんな世の中になってしまったのだろうか」「企業
や国の責任」という意見に分かれたが、しかし、最後に自分のこととして考えると、
「自分はこんなふうにはなりたくない」「氷河期じゃなくて良かった」「コミュニケー
ション能力を身に付けたい」という願いや思いがあった。また、社会に出て、気配り
のできる人間となってほしいという願いでNHKのショートドラマ「グッジョブ G
ood Job」を視聴し、こちらも概ね好評であった。今後も、生徒に現実社会の
厳しさを少しでも多く伝えていきたい。
10.簿記会計の知識を活用した金融経済の学習 都留文科大学 村上 研一
地歴・公民科に転じて6年目、はじめて「政治・経済」を担当することとなった。
金融についての単元で、「社会科学の一分野」としての商業教育の意義を踏まえた授
業づくりを試みた。信用創造の説明は、本源的預金からの貸し出し・預金の連鎖という
教科書的説明に比べ、貸借対照表の基本的しくみを用いた説明の方が現実をより良く説
明できる。すなわち、マネーサプライの大半を成す預金通貨は、銀行に集められた預全
量のみならず貸出先の資金需要に規定される関係や、金融政策の機能が明瞭に理解でき
る。ゆえに、日銀の量的緩和政策は、実体経済取引に規定される資金需要に基づかない
過剰流動性を生むだけで、マネーサプライの増加に結び付かなかった現実を示すことが
できた。このように、経済データを実務性の観点から把握することによって現実経済の
動向をリアルに把握できるところに、科学性と実務性の統一としての商業教育の一つの
意義があるものと思われる。
1 1.なんでやってみよ〜専門高校と地域の連携
北海道・函館商業高校 倉部 静雄
2006年度から3年間の道教委の研究指定事業として、「高校生の知恵」と「食と観
光」で北海道を活性化させる目的で行われた「北のくにづくり」事業に参加した報告。
北海道6圏域に分けて事業が推進され、道南圏域では、函館商業・大野農業・函館水産
の3校で 「高校生による函館エリアの活性化プロジェクト」というテーマのもと、
「食と観光」に関する各種講演会の実施や、3校を生徒がお互いに学校相互訪問し交流
を深め、3校合同でのイベント参加などを行った。
07年度は「花と緑のフェスティバル」へ参加し、「函商どら焼き」の販売や「函館観
光マップ」配布.「来場記念写真」撮影・配布などを行い、08年度は、JR北海道の
「花の駅長さん」活動や開港150年のプレイベント「横浜ポートタウンフェスティバ
ル」ヘの参加、模擬株式会社HAKOSHOPの設立と商品開発の実施、3校合同イベ
ントの「自然の恵みに感謝祭」や「風の世界 津軽海峡祭」の両イベントに参加した。
模擬株式会社の設立によって、オリジナルグッズや北海道産米を使ったクッキーやシフ
オンケーキを地元社会福祉法人の協力を得て製作・販売した。イベント参加を通じて、
「地域の中の商業高校」を改めて認識させられるとともに、今年度で研究指定は終了と
なるが、地域のために引き続き3校連携して事業を行うことができればよいと願っている。
12.総合実践でNHKスペシャル「ワーキングプア」を見る
秋田・能代商業高校 齋藤 隆
NHKスペシャルの「ワーキングプア」について、前回の第39回全国商業教育研究集
会で大阪市立住吉商業高等学校の井上賢二先生の報告を伺い、機会があれば本校の生徒
にも是非このビデオをみせたいと考えました。そうしたところ昨年12月に再放送があ
り、卒業前の3年生全員に総合実践の授業の中でこのビデオをみせることができました。
感想文を読んで、「ワーキングプア」という言葉を初めて聞いたという生徒が意外と多
くいたのには、ショックを受けました。やはり、生徒は学校という閉鎖された社会の中
で生活しているのだと改めて実感しました。自分だけはそうなりたくないという生徒は
多くいましたが、本人だけの問題だと捉えるのではなく、これが政治や制度上の欠陥か
ら起きている問題であり、このような社会は改められなければならないという生徒もい
ました。我々もそうであったように、このままでは多くの生徒は自分たちが生活してい
る現実の社会や自分たちがおかれている社会状況を理解しないままに、高校を卒業して
いくのではないかと考えてしまいました。若者には可能性があるとはいえ、現実にはフ
リーター、ニート、ワーキングプア、ネットカフェ難民など、若者の間にも格差社会が
進行しています。むしろ弱い立場である若者には否応なしに降りかかっている問題でも
あります。これらの問題は、若者自身で到底解決できる問題ではありません。社会の問
題として、行政や政治が解決していかなければならない問題です。
ところで、商業教育が担ってきた職業教育という観点から考えると、フリーター、ニ
ート、ワーキングプア、ネットカフェ難民などの問題は、深く職業観にも結びついてい
ます。格差社会が進行することによって、若者の職業選択が歪められているとなれば、
高校における職業教育はますます重要になってきます。職業教育を担ってきた商業教育
の中核である商業科の教員は、今以上にその責任を果たしていかなければならないと考
えます。
13.NHKスペシャル「ワーキンプア@・A・Bを見て
茨城・竜ケ崎第二高校 富山 勝
商業科1年「ビジネス基礎」の授業で、商業経済検定を終えた2月に、ビデオ学習と
してNHKスペシャル「ワーキングプア」を見せ、生徒に感想を書いてもらったものを
冊子にして配った実践報告。私語や内職をしていた生徒も終盤が近づくにつれ、画面に
真剣に見入る姿があった。一人一人の記述には、言葉不足や誤解も見られたが、総合す
ると、そこには高校生として年代相応の感覚または認識が多く見られた。
【 記念講演 】
「格差社会と教育」 〜教育として「格差」を考えるいくつかの視点〜
一橋大学大学院教授 久冨 善之 先生
自分の怠慢で生活苦になるのではなく、生活環境のちょっとした変化で生活苦となるの
が最近であり、それが「ワーキングプア」と呼ばれる。フリーター、そしてニートだけ
でなく、正社員として働いているのに低年収で生活もままならない状態の人がますます
増えている。どういうことだ。対策を講じないと、いつまでも良くならないことは明白
である。その中で、釧路市での支援は現状打開に一歩前進できるのではないか。国策に
おける取り組みが、机上の空論になりつつある中、一般の人でも手をさしのべられるき
っかけになるのではないだろうかと感じた。[香川]
久冨善之先生の講演の中で、「格差社会」というとき「経済的格差」だけではなく「文
化的差異」が広がりつつあるということ、そしてそもそもこの「文化的差異」は学校教
育の中に内包化されており、再生産されていくので教育活動によってますます拡大して
いくのだということを伺いました。「文化的差異」とは、学校になじみやすい文化を持
った家庭で育った子どもと学校になじみにくい文化を持った家庭で育った子どもが存在
し、その結果、学校における学習能力や生活適応力にもともと差があるということ、さ
らに教育によってその差はますます広がっていくのだということでした。そのため、で
きる子とできない子とか、生活態度のよい子と悪い子などと表面的な結果に対応した指
導だけでは到底指導しきれないということ。日々発生する問題について、表面的な結果
だけをみて対応するだけでは指導がうまくいかないということだ。そのため、教師は生
徒を指導する場合、個々の生徒の「文化的差異」について理解したうえで、個々の生徒
にきめ細かに対応していかなければいけないのかと思いました。また、この研究集会を
通して思ったことは、教師として毎日の仕事を全うするためには、我々が生活している
社会、経済、政治状況やしくみや事件、事故の本質を読み解き、日々の教育活動に生か
し、いろいろな視点から考え、教育実践しなければならないのだということを痛感しま
した。[秋田]
給食費などの問題について、報道などを見たり聞いたりするときの「評価のまなざし」
という言葉に、久富先生のあたたかさを感じました。貧困に至るまでの経過、そうなら
ざるを得なかった経過を考えるということを久しぶりに聞きました。つまらない学校の
授業を、「文化的課題」への関係的取り組み、生徒達がお互いに色々な関係をつくる取
り組みとなるようにしていくことがだと感じました。[北海道]
「簿記は文化」という言葉が出てきて、ふたつのことを思い出しました。ひとつは、
宮崎で行われた全国集会で発表させてもらった自主教材の「簿記の素」。もうひとつ
は、ゲーテのウィルヘルム・マイスターの修養時代に出てくる言葉「複式簿記は人類
が創造した最高のものの一つだ」でした。「教科授業」にドラマはないのか?につい
て、文化性が見えない、楽しく教科授業を受けられない理由は、圧迫、競争とともに、
生徒自身のクリエイティブな「能動性」が薄いことがあるのではないでしょうか。「
教科授業」がドラマになるためには、一人一人の生徒を能動的に参加させるしかけを
つくることだと思います。
「自立支援」での「生活者への尊敬」「自尊感情の尊重」のお話しを聞きながら、
5月に亡くなった母の介護を思い出しました。訪問医療のドクター、ナース、ヘルパ
ーさんにお世話になりましたが、その内の一人のヘルパーさんに介護していただいた
時、母の顔が幸せそうに、和やかになったことがありました。支援と介護に通じると
ころがあると思いました。[東京]
たくさんの資料、データを基にした講演で「格差と貧困の拡大」「子どもの貧困」
「若者の貧困」と、本当にあらためて知ることができました。私の住む地域、宮城県
大崎市でも、特に若者層に働いても働いても楽にならない実態が見られます。そのた
めに、子供たちの家庭教育や生活にゆとりが見られません。子供会の活動や地域の自
治活動にもなかなか参加できかねる若者との対話も少なくなっています。支援の方法
などをこの講演でヒントをもらいました。これからの地域活動に生かそうと思います。
[宮城]
【 レポート 】
第40回集会では、キャリア教育についての取り組みが、ここ2〜3年つづいてい
ます。大学においても「大学とキャリア教育」が盛んになってきました。民主主義の
社会になり、自分の進むべき道は出来るだけ自己の責任において見つけなければなり
ません。何をしているときに一番わくわくするのか、どんな仕事、生き方だったら困
難を乗り越えて取り組めるのか、キャリア形成にとって重要な出発点です。
自己の適性が分からない学生を教育する、あるいは自分の能力を見つけることの必
要性を意識しています。キャリア教育は、「働くこと」「勉強すること」で社会現象
を知り「社会科学の基礎」を学び、自分の適性に合わせ、すべての者を対象にする時
代になってきたようです。昨年の生徒の意識を変えていく長野県の発表、三重県の四
日市学の連続発表、北海道の緻密な発表は高校商業教育の実務性と社会科学の基礎を
学び、優れた発表で参考になりました。また、来年を楽しみにしています。 [京都]
(真嶋レポート)授業プリント「少子化、人口減の原因」の中で、女性が男性に対す
る期待年収と男性の実際年収およびその割合が、青森県と東京都の数値が示されてい
るのを見て衝撃を覚えた。東京都ではもっと平均年収は高いのではと漠然と思ってい
たのだが予想を大きく下回る数値でびっくりした。このような事実にもとづく資料の
提供は、生徒にとっては単なる比較のみならず、自分だったらどうだろうという思い
を巡らせることができるのではないだろうか。
(倉部レポート)働くことは一見、華やかに見えるけれど、実は大変なことであり、
仕事を続けていくことも厳しい。そのうえ、ワーキングプアに陥る危険性がある。
私が高校生の頃と違って、今の高校生はどこか冷めた視線を世の中に投げかけてい
るような気がします。その仕事に就くことのみに全力を注ぎ、進路先が決まれば、
あとはそのまま何もしないということが意外に多い。世の中の仕組みをしっかり教
え、社会に送り出すことが大切であることを教員がしっかり認識しないといけない。
若い世代ほど労働に関する法律に関して丸腰である。予備知識をしっかり植えつけ
ていかないと、社会から早く放り出される生徒も出てくると思われる。
[香川:安富稔倫]
【 全体を通して 】
真夏の暑い中、今年は清水先生のお骨折りにより、東京の國學院大學をお借りし
て集会を持つことができました。校舎の中は涼しく、また久しぶりに学生食堂にて
昼食をとることができ懐かしい気持ちでした。さて、今年は東京ということで集ま
りやすい場所でしたので何人の方が参加してくださるかと楽しみにしていたのです
が、予想よりは少なく残念でした。しかし、検定中心の高校現場から離れ、商業教
育の原点に戻ったレポートに触れることができ、元気が出ました。もっと多くの先
生方が参加され、今後の商業教育についての話ができればと思いました。[長野]
今回初めて、商教協全国集会に参加させていただきました。教育についての現状
とその課題など、様々なことを考えさせられました。「教育」はやり直しがきかな
い、出来ない、という前提条件の中で、大人が子どもを導いていかなくてはならな
い。だが、その大人が、"大分の教員採用問題"を起こしたり、モンスター.ペアレ
ント問題を起こしたり。さらに、教員免許更新制を導入する「教師の適正の判断の
基準は?」など、周りの"大人"がそのような状態の中で、きちんとした「教育」は
出来るのか、そう思いました。また、職業教育、商業教育などの専門的な教育は若
年層の雇用対策となると思います。そういったことからも、高校生に十分と言える
キャリア教育をしていくことが今後の課題ではないかと思いました。今、私が教師
という職業を志望し、教職について学んでいる中で、この3日間でたくさんのヒン
トが得られたと思います。教師になったら、こういうことをしたい、ということも
具体的にイメージできるようになりました。ありがとうございました。教師という
職に就けるように頑張りたいと思います。 [大学3年]
私は、民間企業、政府機関、児童養護施設勤務を経て、募集停止が決まった商業
科の教員(3年契約)になりました。ビジネス基礎、簿記、会計、経済活動と法、
国際ビジネス、課題研究を担当していますが、同じ科目を教える教員が同じ学校に
はいないため、他校の商業科の先生から学びたいと考えていました。そんなとき、
偶然ネットで商業教育研究協議会を知り、入会を申し込みました。この夏の研究集
会で得たことは3つあります。ひとつは、商業教育の目的について改めて考えるこ
とができたことです。2つ目は、全国の諸先生方の実践的な報告を聞くことができ
たことです。2学期に入って、さっそく使わせていただいたアイデアもあります。
3つ目は、商業科で同じ科目を担当する教員ならではの苦労や葛藤を話し合えたこ
とです。休憩時間には個人的な相談にも乗っていただきました。
私の3年間の任期も後半に入ってきました。授業がなかなかうまくいかず、試行
錯誤を繰り返している毎日です。米国発の金融・経済危機について、あの先生は授
業でどのように取り上げているだろうか、と思ったりすることがあります。米国型
経済モデルが崩壊し、世界の金融・経済の枠組みが大きく変わろうとしている今、
生徒を取り巻く具体的な現実、世界を伝えることができるのが商業科目の強みなの
だ、という、研究集会で聞いた言葉を思いだしながら、毎日の教材研究を行ってい
ます。[東京]
97年、京都市立西京商業高校を退職し、98年〜02年の四年間は京都橘女子
大就職課の職員として勤務しました。女子大時代の卒業生は、西京時代の90年代
の卒業生が20代後半から30代前半の就職氷河期時代にあたります。そのような
ことから、今の雇用の問題、ワーキングプア、就職氷河期時代に関心を持ち続け、
こだわっていくつもりです。
そのようなときに、商業教育研究集会の案内をいただき、久冨先生の記念講演「格
差社会と教育」、浜林先生の特別講演「教育の現状と商業教育の課題」がありまし
たので今年も参加しました。この研究集会で学んだ事を、京都伏見年金者組合、退
職教職員の活動、日々の活動の熱心な討議に感謝いたします。自分が歩んできた商
業科教員生活を振り返り、反省もし、良かったなと安心もしています。商業高校廃
止、総合学科設立により、情報が指導できても簿記や法規の指導ができないなど、
商業科教員のレベル低下が見られます。そして、生徒側も全体として最低限の知識
・技能が不足し過ぎている現実はどうすればよいのだろう。また、商業高校卒業生
をどうとらえるか(進学か就職か)で討議内容も異なりはしないかとの疑問も生ま
れました。普通高校出身の大学生の商業的知識のなさに驚いている現在、中学校、
高校普通科教員への商業教育の理解をどう進めるか考えたい。さらに、総合学科の
教員、普通科の商業科教員をフォローする必要性も感じた。リアルな実践討議に参
加することにより商業教育の実態にふれ、自己を高めたいと思います。 [石川]
久しぶりに参加させていただきました。ワーキングプア等、最新のテーマの議論
があり現実に直結した教育実践という商業教育の意義を改めて実感しました。今後
とも、こうした商業教育の視点を大切にして、今後の授業づくりに取り組んでいき
たいと思います。[神奈川]